「ことば仕事」と「デザイン仕事」で音楽を変える

広告代理店時代、デザイン会社にいくと、よくラジオがかかっていることがありました。近所の歯医者さんでもラジオがかかっています。ラーメン屋さんや定食屋さんなどでもそうです。しかし、オフィスではラジオをかけることはありません。DJの「ことば」が仕事の邪魔になってしまうからです。

文章を書いたりするときに、他からことばが聞こえてくるとどうしてもそちらに注意が行ってしまい、文章が書けなくなります。ことば仕事と呼んでいるのですが、そうした作業の場合には、ラジオは集中力を削ぐ原因となります。これは日本語の音楽でも同様で、歌詞に注意が行ってしまうのです。

一方、デザイン仕事、広く言えばアイデアを出したり、設計を考えたりするような仕事は、ことばが聞こえてきても影響はありません。むしろそのことばをヒントにアイデアを広げることができます。ラジオの話題は、いわば擬似ブレーンストーミングのようなかたちで発想を広げてくれるのです。

こうした経験から僕は、ことば仕事とデザイン仕事とで、聞く音楽を変えるようにしています。ことば仕事であれば歌詞の聞き取れない洋楽や、歌詞のないテクノミュージックなどを聞いて作業に集中し、デザイン仕事であればラジオやJ-POPなどを聞いて、ヒントをキャッチしようとしています。

こうして音楽によって自分のモードを変える。人はモードによっていかようにも変われるのです。