八百万の神モデルのブランド構築プロセス
昨日は「日本遺産ブランド推進事業」委託業務の提案書の提出日。こうした提案をつくる手順を振り返ってみた。(ここで書くことは団体の総意ではなく、個人的な見解であることを付記しておきたい。)
「ブランド推進」と名付けられた意味
今回のブランド推進事業は、もともと日本遺産プロデューサー派遣事業として取り組まれていたものが、拡張したもの。なので、当然「ブランド推進」ということが問題になる。この部分をどれくらい比重を置くかによって提案の内容は変わってくる。
ひとつは、(広告代理店出身者としては)まっすぐにブランド構築の提案をするということが考えられる。ブランドビジョン、ミッション、バリューを定義して、それを実現、伝えていくための施策を考えていくというやり方である。しかし、今回はそれはぴったりとはこない。プロモーションにかけられる予算も限られているし、地域活性化の文脈からでてきた事業なので、地域での取り組みを引き取りつつ、創発的にブランドを構築していく必要がある。商品と違って、かっちりとしたブランド定義がしづらいし、そうしてしまうと地域の多様性を許容できなくなってしまう(矛盾をきたしてしまう)可能性もある。「ブランド推進」は、なのでこうした文脈で理解してはいけない。
ボトムアップによる構築
そうすると、これまでのプロデューサー派遣事業で地域に対してアドバイスを行なってきたボトムアップの取り組みを、ブランド構築という観点から再構成するということになる。各地域で異なるさまざまな取り組みを、日本遺産という文脈で再編集していくといったほうがいいだろう。栄養素が詰まっているけれども、なにが溶け込んでいるのかわからない日本遺産というスープのなかから、日本遺産の「かたち」を浮かび上がらせる取り組みである。具体的には、受注が決まってからでないと書けないけれど、前者のやりかたと似ているようで、手つきが違う。
たとえば、「日本文化を定義する」なんてことは、なかなかできないだろう。一方で、多様な日本文化を紹介しながら、それらをある視点からククりなおすことは、可能である。日本遺産の編纂には、そうしたククりなおしによるブランド表現を十二単のように重ね合わせながら表現していくことが求められる。
別の言い方をすると、ブランド構築をするためには「やるべきこと」を定義すること以上に、「やってはいけないこと」を定義することが重要だ。モーゼの十戒ではないが、「べからず」を決めることが、高いロイヤリティをほこるコミュニティをつくるのには欠かせない。しかし日本遺産ではそういうアプローチはどうも居心地が悪い。「べからず」はたくさんあるはずだが、それを言うと地域を萎縮させてしまうだろう。
八百万の神モデルのブランド構築
そういうとき、「あなたが取り組んでいることをこういう意味なんですよ」と、活動に意味づけていく作業が、より効果的だろう。十戒による一神教的なアプローチではなく、八百万の神ひとつひとつを名付けていくような作業に近い。通常の一神教的なブランド構築ではない、八百万の神のブランド構築プロセスが求められている。
今回の事業は、その意味で、新しいブランド構築手法の取り組みというふうに考えることもできそうだ。