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製品のデザインからディスコースのデザインへ

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人工物、すなわちデザインの対象は、製品から商品、サービス、コミュニティー、さらにインタフェース、マルチユーザーシステム/ネットワーク、プロジェクト、ディスコース(ディスクール)へと広がっていく。この軌道に従い、流動的で、非規定的で、非物質的で、仮想的な質に関わっていくことになるという。その結果、ひとつの解釈を導き出すような因果モデルから、複数の解釈が存在する言語モデルに置き換えられていく。機能的なメカニズムの生産から言語の構成的な使用へと移行するのである。

 

 製品レベルのデザインは、その有用性によって評価されるため、文化の影響が比較的小さい。「形態は機能に従う」という格言は、この製品レベルでのデザインの格言としては機能する。

しかし商品、サービス、コミュニティーのデザインとなると、制度化から逃れることができない。慣例や慣行、文化によってきまる。必ずしも機能には従わない。そこには機能としての質ではなく、象徴の質が関わってくるのである。民俗的で地域的な美学も考慮する必要が出てくる。製品レベルで通用した普遍性が、ここでは力を失っていく。

インタフェースのデザインは、相互作用性、ダイナミクス、自律性という3つの特徴をもつ。相互作用性とはアクションに対するリアクションがあるということ、ダイナミクスとは時間の経過にともなって変化、反応していくこと、自律性とはプロセスが完結し、そのプロセスのなかで自己学習が行われていくということを指す。自然な相互作用をもち、理解可能なインタフェース、さらにユーザーの行動を学習し、状況に対応していくインタフェースが考えられる。

マルチユーザーシステムとネットワークのデザインとは、一番わかりやすい例が道路標識である。多くのユーザーの行動を調整する仕組みである。インタフェースがユーザーと機械の一対一の対応だったのに対して、多くのユーザーのリテラシーやバックグラウンド、多様な関心や目的と言ったものに対応しなくてはならない。システムが提供する情報を、ユーザーに利用可能なものにし、多くの人にアクセス可能なものにし、さらにユーザー同士がお互い繋がり合うようにすることで、コミュニティが生まれる。

プロジェクトのデザインの特徴は、方向性である。マルチユーザーシステムが多様なユーザーの行動の調整に重きをおいていたのに対し、多様なプロジェクトメンバーの行動の方向付けを行っていくことになる。そこではナラティブ(物語)が重要になっていく。経営においてナラティブが重視される流れは、マルチユーザーシステムからプロジェクト型へと、そのデザインの対象が変化してきていることにあるだろう。

ディスコースのデザインとは、言説のデザインである。あるコミュニティーに帰属する組織化された話し方、書き方、行動の仕方である。近年の「デザイン思考」という活動は、デザインという言説そのものをリ・デザインしようとしている。概念の変革を担う。ディスコースは、一定の形式を守るようにという保守的な圧力と、そこから抜け出し新しいディスコースを生み出そうとする創造的な働きがある。

 

意味論的転回―デザインの新しい基礎理論

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