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ビジネスの構造設計によって潰れない事業を作る

ビジネスモデル設計は、構造設計の側面も持っています。いくら優れた建築であっても、それが物理的に建設できなければ絵に描いた餅です。地震が来ても倒れないような耐震性も求められるでしょう。無重力空間に建物を建てるのでなければ、そこには必ず重力による制約がかかってきます。

ビジネスにおいても、やはりそのビジネスモデルが実際のビジネスとして構築可能かどうかチェックする必要があります。建物が重力という制約に影響されているのに対し、ビジネスには収支という制約があります。

どんなに資本金があっても、永遠に赤字を垂れ流していては、会社は倒れてしまいます。脆弱な構造になっていれば、ちょっとした不況や社会的変化、競合企業との競争の中でつぶれてしまうでしょう。ビジネスの環境変化にも耐えうるようにビジネスモデルを設計する必要があります。

ビジネスモデル設計は、この意味で、ビジネスの構造設計でもあるのです。

この構造設計がうまく行っているかどうか確認するのには、最終的には、いわゆるボトムラインと呼ばれる収支が判断基準になります。収益の流れコスト構造が、しっかりとビジネスという建築を支えているかどうかをチェックするのです。

例えば最近、コンビニエンスストアが宅配のサービスをスタートしています。セブンイレブンのセブンミールでは五〇〇円以上購入すると無料で翌日配送してくれます。一方、ローソンのスマートキッチンでは毎週一回配送の、いわゆる生協型のサービスになっています。

この二つのビジネスのコスト構造は異なります。セブンミールの場合、翌日とはいえ、注文に合わせて配送を行うことになります。もし注文が少なければ、配送費用だけで大きな赤字となってしまいます。そこで、食事だけでなくイトーヨーカドー、そごう・西武などのグループ全社の商品が買えるようにし、通販会社のニッセンを買収したりしています。お弁当だけなら赤字でも、お弁当といっしょに他の商品を配送できれば、全体として黒字化できるという目算なのです。

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ビジネスモデルに書き起こしてみると分かるように、高い配送コストをカバーするために、このビジネスにおいては一定の注文量がなければ成り立ちません。この不可欠なリソースとしての注文量の確保が死活問題です。

一方のローソンは、週に一回の配送なので、セブンイレブンほどのコスト負担はありません。そのため、事業のリスクは低くなります。建物として安定性があるのです。ただその分、翌日に配送してくれるセブンイレブンに比べると、利用者の利便性が損なわれています。利便性と事業リスクとがトレードオフとなってしまうのは、いたしかたないのでしょう。

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ビジネスモデル上、週一回の配送とすることで配送コストを低減させ、(現時点では一都七県にとどまりますが)配送料の完全無料を実現しています。また、週一回配送の不便さをカバーするために、レシピ提案などに力を入れているのも特徴です。

このように、宅配ビジネスにおいては、配送頻度に合わせて、コスト構造と収益の流れを設計する必要があるのです。宅配ビジネスにかぎらず、このようにビジネスモデルの上部構造を、コスト構造と収益の流れという下部構造が支えているのです。