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目的はビジネスモデルそのものではなく、顧客価値の設計にある

建築との比喩で言えば、設計で重要となるのは建物そのものだけでなく、そこでどのような生活や活動が行われるかという点にあります。建物はあくまで箱であり、その箱のなかで活動する人こそが主人公であり、設計とは、そこで起こるドラマの設計なのです。

ビジネスモデルも同様で、モデル自体が主人公になっては本末転倒です。そのモデルを採用することによって、どのようなドラマが生まれるのか。そうしたドラマの設計、顧客価値の設計にこそ、このビジネスモデル構築の目的なのです。

例えば、機械が故障してカスタマーセンターに電話をしたら丁寧な対応をしてくれ、すぐに修理して送り返してきてくれたとします。こうしたオペレーションを可能にするためには、カスタマーセンターの整備、運営だけではなく、修理のしやすい製品設計や修理部品の確保、修理プロセスの迅速化など、さまざまな要素が一貫性をもって組み立てられていなければなりません。当たり前ですが、カスタマーセンターが勝手に、迅速な修理を約束するわけにはいかないのです。

こうして考えるとき、ビジネスモデル構築の一番の大黒柱となるのが、やはり顧客(Customer Segmentations)に対する価値提案(Value Propositions)になります。その他の構成要素はすべて、価値を支えるものとして存在しています。

その価値を生み出すための活動(Key Activities)は、住宅でいえば料理を作る台所や書斎ということになるでしょう。料理でおもてなしをするわけです。そこには、食材や料理のノウハウといった価値を作るためのリソース(Key Resources)が必要になります。活動やリソースが足りなければ、外に買いに行くこともあるでしょう。これがビジネスモデル上のパートナー(Key Partners)にあたります。

また、せっかくの価値もお客様に届けられなければ、無意味です。価値を届けるためのチャネル(Channels)顧客との関係(Customer Relationships)が、お客様を迎える玄関やおもてなしをする応接間にあたるでしょう。

最後、こうした建築物を支える土台として、収益の流れ(Revenue Streams)コスト構造(Cost Structure)が存在します。

住宅の設計においても、日常生活をし、またときに来客をもてなすために欠かせない要素があるように、ビジネスモデルを設計するときにも、これらの要素が必要不可欠です。

ここに挙げられた九つの構成要素を表現したのが『ビジネスモデル・ジェネレーション』で紹介されたフレームワーク、ビジネスモデルキャンバスです。必要不可欠な要素を、相互の関係性も含めて表現するこのフレームワークは、まさにビジネスモデル設計のための標準的設計図と呼んでいいでしょう。

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このフレームワークを使って、構成要素をうまく組み合わせていき、全体として一貫性をもった、調和のとれた設計にしていく。そうして設計された自宅が住みやすいのと同様に、うまく設計されたビジネスはスムーズに事業が動いていくでしょう。ビジネスモデル設計とは、モデルを使った顧客価値の設計プロセスなのです。