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ドキュメンタリーのふたつの作法ー小野規と森田具海のアプローチを巡って(KYOTOGRAPHIE2018)

堀川御池ギャラリーでは、二人のドキュメンタリー手法の写真が展示されているが、それぞれ対象的である。

www.kyotographie.jp

小野規(おのただし)は、スーパー堤防と呼ばれる東北沿岸に建築されている大型の堤防を撮影する。

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ここにはもちろん、堤防に対する批判も込められているが、それよりもさきに小野さんの堤防のフォルムに対する、ある種純粋なまなざしを感じとることができる。

たとえばこれなんかは、どこかしらチャーミングだ。

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こうしてフォルムへと没入していけば行くほど、しかしかえって、人間の自然に対する無謀な挑戦(バベルの塔のような)への鋭い批評性が立ち上がってくる。フォルムという抽象を経由することによって、単にスーパー堤防という個別具体の話を超えた普遍性を獲得している。

一方、同じ会場の森田具海は三里塚闘争によって建てられた壁を、はっきりと空港建設反対の立場から撮る。壁の意味性を、構図の中で浮かび上がらせる。壁には、反対運動をしていた人々の言葉も描かれる。

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展示の方法も、はっきりと「フェンスのこちら」を意識させるものとなっている。こうした政治性は好みが分かれるところだろう。写真の一部ににじみ出てきていた、人々の対立を超えた、対立を無効化するような自然の浸出が、もっと前にでてきてもよかったかもしれないと思った。

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