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ロジックに収まりきらない身体ー池大雅の身体的リズムと空間

京都国立博物館で行われている池大雅展。貪欲にさまざまな手法を取り入れながら、自らの作風を打ち立てていくプロセスが分かる、初期から晩年まで幅広く作品を集めた展覧会。

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その手法の中でも「指墨画」と呼ばれる、筆ではなく指で描いた絵が面白かった。水墨画は、どこか観念に行きやすいように思う。それも、漢詩と並べて表現していくときに、どこまで水墨画をみずみずしく浮かび上がらせていくか。観念に陥らないために池大雅は、「指墨画」によって自らの身体の痕跡をわざと残してみせたのだろう。この絵では指の腹を押すようにして、童子の頭にあえて指紋を残している。こうした絵を、観衆の面前で即興的に描いたのである。

そうすることで、頭であらかじめ描いていた理想の線を身体が裏切っていくことになる。早熟の天才・大雅は、そうして自分の「完成」を先延ばしした。そしてその先に、新しい表現があった。

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この指による表現は、たとえば晩年の傑作「蘭亭曲水・龍山勝会図屏風のうち龍山勝会図」において、生命感をもった木々の葉の表現に結実している。指先を使うことによって宿る身体性によって、木々の先の葉にやどる生命性がリズミカルに表現されているように見える。

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また構成においては、まるでそこに自分がいるかのような表現に行き着いた。これは大雅の旅行体験に基づくものである。数多くのスケッチを残しており、過度な演出は避けつつも、かといって写実にも収まらない主観的な印象を描いてみせる。

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