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定額サービスにより顧客と長い関係を築く

安定的な収益構造を持つビジネスは、どの企業にとってもうれしいものだ。その方法の一つとして、定額サービスという選択肢がある。毎回、一度きりの取引を繰り返していると、需要の変化によって収入が大きく変動するけれど、それが毎月定額となれば、安定的に入ってくる。

たとえば音楽サービスにおいては、iTunesのように音楽を買うタイプのサービスから、海外ではSpotify、国内でもSONYのMusic Unlimitedなどの定額サービスへの移行が始まっている。Music Unlimitedであれば150万曲という膨大な量の音楽が一ヶ月980円で聴き放題となるこうしたサービスは、もちろんユーザーにとってもうれしい。

Spotifyは12/11に、さらに20市場でサービスを開始したが、残念ながら日本は含まれていなかった。日本法人も立ち上がったようなので、そう遠くない将来、日本でもサービスが開始されるに違いない。

Spotifyは米国時間12月11日、世界の20の市場で新たにサービスの提供を開始したことを明かした。

Spotify、新たに20市場でサービスを開始 - CNET Japan

 

音楽だけでなく映画、それも映画館で観る映画についても定額サービスが始まった。 

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「ミニシアター」をはじめ小規模の映画館の閉館が相次ぎ、古い作品をスクリーンで見る機会が減っているなか、最大手のイオンエンターテイメントは定額で古い作品を何度でも見られる新たなサービスを来年から全国の映画館で始めることを決めました。

イオン 古い映画を全国の映画館で見放題に NHKニュース

 音楽データもそうだが、映画館という設備産業も、人数による変動費は少なく限界利益率は高い。つまり、一度設備を作ってしまえば、あとは利用者が増えれば増えるほど収益が上がる。であれば、施設を遊休させておくよりも、低価格であっても稼働させた方がいい。

その稼働方法として今回イオンがとったのが、定額サービスだった。一ヶ月1200円、一年であれば9800円という価格帯は、奇しくもHuluなどのウェブの動画見放題サービスの価格帯と似たようなものになった。オンラインもオフラインも、結局ユーザー側の財布との相談になるので、似たような価格帯に落ち着いていくということもあるのだろう。

また、イオンの場合、こうして集客することでショッピングモールでの購買も期待できるというメリットも想定され、価格設定は柔軟に考えることができるのだろう。

これまでと異なり、こうして顧客との長い関係を結ぶことによって、上映ラインナップの構築のしかたも変わってくる。たんにヒット映画を並べるだけでなく、顧客の声に耳を傾けながらのプログラム設計もできるはずである。従来、リピーターによって支えられていたミニシアター系映画館のような運営もできるだろう。

こうした定額制は、たとえば今後、電子書籍などの世界にも広がっていくのではないかと思う。その結果、買ってもらえればいいという一発勝負の企画ではない、もっとじっくりと腰を据えた企画も増えてくる。こうした顧客との関係の変化は、提供側の姿勢、作り手の姿勢にも影響をあたえるのだ。