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Appleによるモバイル決済イノベーション

Appleがモバイル決済の拡大を目論んでいるという記事が、ウォールストリートジャーナルに掲載されています。 iTunesストアの登録者は5億7500万人で、これだけの数の決済をプラットフォーム上で行なっているというのは、ほとんど存在しません。

 米アップルはiPhone(アイフォーン)、iPad(アイパッド)の顧客とiTunes(アイチューンズ)ストアに登録されているクレジットカード情報を活用して、モバイル決済サービスを拡大する準備を進めている。

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アップル、モバイル決済拡大へ―物販も対象に

音楽や電子書籍などのデジタルコンテンツだけでなく、物販にも拡大したら、大きなイノベーションとなります。ユーザーとの接点において、クレジットカードを完全に置き換えてしまう可能性さえあります。クレジットカードは、決済インフラとしていわゆる「土管化」してしまうでしょう。

Appleが抱える課題

Appleのモバイル決済には、おそらく三つの課題があります。

ひとつは、端末とレジとの連携です。デジタルコンテンツであれば、そのまま端末内で商品との照合、受け取りが進められますが、物販となれば実際の店舗にあるレジとの通信が必要になります。どのような技術で通信するのか。ICチップでの通信というよりは、Bluetoothなど無線技術ということになるでしょう。

ふたつめは、導入してもらう際の店舗側の障壁です。これは機材を導入しなければならないという物理的障壁と、Appleとの契約業務、決済プロセスの手間に対する心理的障壁などがあります。Appleとしてはおそらく、iPadによって手軽に決済ができるような仕組みで、導入コストの低減を図るでしょう。サイゼリアなどのレストランでは、iPod touchによる注文入力が始まっています。レジのシステム全体を置き換えるソリューションも提供できそうです。

みっつめは、悪用される危険性です。記事にもありますが、記事にもありますが、iPhone5sに搭載された指紋認証は、他人に勝手に使われないようにしつつ、パスワード入力の手間を低減するための施策だと考えられます。5s発売時には「指紋認証なんかいらない!」「なくても平気!」という反応もありましたが、これがモバイル決済のための準備だと考えれば、納得ですね。

こうした機能の意味というのは、「モバイル決済」という未来からバックキャストしないと見えこないということを、あらためて感じました。日本のメーカーに必要なのは、今のユーザーニーズに偏重せず、将来を見据えた設計をすることなんじゃないかと感じます。

スイッチングコストの低さがどう影響するか?

こうしたAppleの動きと、昨年から急拡大しているSquare、Coiney、Paypal Here、楽天スマートペイなどのモバイル決済サービスの普及は、もちろん関連しています。Appleとしても、こうしたビジネスにデファクトスタンダードを取られるまえに参入したいと考えているでしょうが、それほど焦ってはいないと思います。今回の決済サービスは、(今までのクレジットカードや電子マネー導入と違って)スイッチングコストはそれほど高くないため、「後発でもひっくり返せる」と思っているのではないかと思います。

電子書籍などのデジタルコンテンツプラットフォームは、一度そのプラットフォームで購入し始めると、使い続けてしまうという囲い込みの効果がありました。今回の決済システムは、今のところこうした仕組みはありません。Appleが非常に便利な方法でサービスをスタートさせれば、市場は一気に変わっていくでしょう。