LIFEHACK STREET 小山龍介ブログ

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メタフィクションとしての『この世界の片隅に』から生まれる二重の居場所

居場所をめぐる物語。戦争の中で居場所を失う人たち。その失われてしまった居場所をていねいに描き出した作品。

すずの描く世界と現実の世界とが二重写しになって、そしてずれていく。あったはずの未来と、実際の現実。居場所は、私が居る場所であり、居なかったかもしれない場所である。

パラレルワールドとしての異界。居場所の二重性が、メタフィクションとしてしっかりと意識して描かれている。映画になることで、このメタな視点はより一層、浮かび上がっていたように思う。

ここでいう居場所の二重性というのは、たとえば地域に住みながら、日本国に住んでいるという包含関係ではない。実際の現実とありえた架空の現実のズレである。このズレに敏感になるとき、人々の生き方が変わる。戦時中、空爆や原爆で死んだのが、もし自分だったとしたら、という想像は難しくない。その「ありえたかもしれない現実」をもうひとつのパラレルワールドとして日々実感しながら生きることは、生に二重の意味を与えるだろう。

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