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アブダクション思考のトレーニングとしての即興(インプロヴィゼーション)

アブダクションはインダクション(帰納)とは大きく異なる。帰納は、事例を列挙していく中で共通項を探していく推論だが、アブダクションはそうではない。

 

アブダクションの定式

アブダクションは次のように定式化される。

驚くべき事実Cが発見される

しかしもしHが真であれば、Cは当然の事柄であろう

よって、Hが真であると考えるべき理由がある。

『アブダクションー仮説と発見の論理』(米盛裕二著)P54 

アブダクション―仮説と発見の論理

アブダクション―仮説と発見の論理

 

 

たとえば、赤い服を着ている女性に何人もすれ違ったことから、「この町には赤い服を着ている女性が多いらしい」と推論するのは帰納法だが、そこから「赤い服という主張の強い色を女性が着るということは、女性の権利が認められた地域なのだろう」と推論するのはアブダクションである。

前者は赤い服を着ている女性が多いという事実をそのまま言い方を変えて繰り返しただけである。後者は、そこから「女性の権利が認められている」という仮説を導き出している。

新しい発見にたどり着くには、こうしたアブダクションによる推論が欠かせない。

アブダクション思考のトレーニングとしての即興

インプロヴィゼーション(即興)は、ここでいう「驚くべき事実C」が次々と突きつけられる状況に置かれる。予定調和ではなく、まったく想定していなかったことがらCが他者(環境)によって起こされる。そのできごとを拒否するのではなく、それを受け入れ、「Cは当然の事柄であろう」とされるような文脈を創造する。

こうした「驚くべき事実C」は、現実の世界では次々に起こっている(はずである)。しかしそれを従来の文脈に引き寄せて、理解、納得している。インプロでいうYes, Andは、そういう従来の文脈に取り込むのではなく、新しい文脈形成を促すための原則である。