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10月に中国とアメリカが衝突するときの日本の対応

米中首脳会談が低調に終わったのを受けて、それだけでは終わらないだろうなと思っていたら、こんな記事が。

米国の政府高官が本紙(フィナンシャル・タイムズ)に語ったところによれば、軍艦はスプラトリー(南沙)諸島に建設された複数の島の海岸線から12カイリ以内の、中国が自国の領海だと主張している海域に入るという。

(中略)

米国のアシュトン・カーター国防長官は何カ月も前から、海洋活動を積極化させる許可を求めてきた。ホワイトハウスはこれに対し、南シナ海の係争海域で状況がエスカレートするとの懸念から抵抗していた。だが、習近平国家主席が先日ワシントンを訪問した時にも南シナ海問題で前進が見られなかったことから、ゴーサインを出した。

jbpress.ismedia.jp

アメリカも、南シナ海での中国の拡張について、真剣に考え始めたということなんだろう。これは中国の主張と真っ向から対立する、強力なシグナルになる。

記事はもともとフィナンシャル・タイムズで、記者はDemetri Sevastropulo。LinkedInで見たところ、上智大学、北京大学を経てハーバード大で東アジアの国際関係を学び、卒業後もアジア関係の取材を続けてきたという生粋のアジア通。

https://www.linkedin.com/in/demetrisevastopulo

この記事が正しいとしてアメリカが軍艦を派遣するとなれば、中国は絶対に無視することはできない。大なり小なり、必ず中国が衝突を起こすことになるだろう。4月、台湾へのアメリカ戦闘機の緊急着陸では強い態度を示せなかった中国が、ここではしっかりと主張するだろう。

中国は、現在の状況の特殊性から、抑えた反応をせざるを得なかった。しかし台湾問題は、中国にとって極めてデリケートで非常に重要なものだ。今度は中国政府の方が、最もはっきりとした形で米国に対し、今回の事件に対する自分達の不満を示す事のできる、しかるべきチャンス到来を待つに違いない。

「シナリオ通り?」米軍戦闘機が台湾に緊急着陸:諸説とその結果

 

こうした動きは、先日成立した安保法案にも当然関係している。日本はよくも悪くも、ここでしっかりとアメリカ側の立場を表明して、この衝突に向き合うことになる。突然そういうことになる危険性は極めて低いが、米軍が攻撃されたとなると、南シナ海のシーレーンが閉鎖される危険性も考慮したうえで、存立危機事態を宣言する可能性も高い。

我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」。ほかの前提条件として、「国民を守るために他に適当な手段がない」

kotobank.jp

南シナ海のシーレーンの重要性については、次のような分析がある。日本の存立危機事態としては十分であると内閣が判断する可能性は高い。

中東から日本への原油は、チャーターされたVLCCにより往復ピストン輸送で運ばれている。航程が増大すると、到着が遅れるため、チャーターするVLCCを増やさなければ平時の所要量を確保できなくなる。ロンボク海峡への迂回による片道1,000カイリ増では10隻程度、オーストラリア南方迂回による片道5,200カイリ増では50隻程度、それぞれVLCCを増やす必要がある。

中国が“Area Denial”海域だけを宣言した場合には、日本は平時原油所要量を確保できるが、“Anti-access”海域を設定して実効的に措置した場合、平時所領量を中東方面からだけで賄うことが難しくなる。

oceans.oprf-info.org

戦争に巻き込まれないための法律という説明であったが、安保法案のせいで戦争に巻き込まれるという可能性ももちろんある。一方、安保法案によって日本がバックアップすることもあって中国が強硬手段に出られないということだってある。

僕自身は、後者の可能性を支持する立場。来年以降ではなくこの時期に安保法案が決まっていたことが、アメリカの行動に影響を与え、結果として南シナ海の安定を維持するために早いタイミングで楔を打てた、と解釈したい。