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イノベーションにまつわる不確実性を受け入れる

前回(ビジネスモデル構築に必要な三つの視点)でも触れたように、ビジネスモデル構築には三つの異なる視点からのビジネスの見直しが必要になります。しかしこれだけでは十分ではありません。イノベーションを起こそうとすれば、ここにもうひとつ、変化を起こすためのあるスタンスが求められます。それが、不確実性を受け入れるという態度です。

トップマネジメントは、この先どうなるかわからない不確実性の高い状況の中、重大な判断が求められます。あらゆる情報が揃っていて、かならずこうなるという未来が予測できていれば別ですが、多くの場合、それほどクリアではありません。

たとえば、ある企業との事業提携を進めるべきかを判断する場合を考えてみましょう。客観的に見て事業のシナジーも生まれるし、よさそうな提携だったとしても、企業文化の違いや提携後の進め方によっては、失敗に終わる可能性は否定しきれません。将来どうなるか100%正確に予測することは不可能なのです。予測不可能な世界で下すのが、経営判断なのです。

一方のミドルマネジメントは、過去の実績を元に予測可能な世界で業務を遂行しています。「このプロジェクトは難易度が高いから、20%くらいの確率でスケジュールがのびそうだ」という判断は過去の経験に裏付けられており、かなり確実性の高い予想であり、再現性の高いものです。

ミドルマネジメントに求められているのは、こうした再現性の高さです。「製造現場の歩留まり率が、今回は70%だったけど、次はたまたま90%になった」というように、その都度大きくぶれるようではまったく意味がありません。再現可能でなければだめなのです。

しかし経営判断は、何度も繰り返し起こるような判断ではありません。その都度その都度、社会や経済、市場の動向などを見据えた一度きりの判断です。その判断の結果には、「つねにこうすれば成功する」といった再現性はありません。あるときは成功しても、次の成功が約束はされていないのです。

別の言い方をすれば、トップマネジメントに求められているのはアート思考であり、ミドルマネジメントはサイエンス思考だと言えるでしょう。経営者がよく言う言葉に「経営はアートとサイエンスの融合である」というものがありますが、これはまさに経営者に求められるものを的確に表現しているのではないかと思います。

アートにおいては、単に過去を正確に繰り返す再現性は敵ですが、サイエンスにおいては、再現性がなければまったく評価されません。そしてイノベーションとは、高い再現性を求めるサイエンスに加えて、新しいものを生み出すアートの思考がなければならないのです。

ビジネスモデル・イノベーションにおいては、不確実性のなかで決断するトップマネジメントの思考が求められるのです。