――コンサルタントとして仕事をする中で、クライアントさんにはどのような変化がありますか? またクライアントさんが変化することによって、世の中がどのように変わっていっていると思いますか?
すごく重要なのはインプロビゼーション、即興のメソッドです。これまでは、今までの計画に基づいてこうやりなさい、と事前に立てた計画を遂行するというパターンでやってきました。あまりに変化が激しいことと、現場対応がものすごく重要になってきている現在は、現場の即興性、即興力ということがものすごく事業の展開に大きな影響があります。そして、それは会社のパワーとも言える。
もともと日本の企業というのは「戦略がない」とマイケル・ポーターにも怒られたくらいでした(笑)。トップで経営判断するというよりも、現場の即興力で成り立っているところがありました。ただ、それは近年失われてきていて、もう一回そこを取り戻していこう、ということです。
――即興力は、もともと、日本人が持っていた力ということですね。
そうですね。だいたい、トップがぼんやりしていても、現場はすごく優秀ということが、(ステレオタイプですが)言われていて、現場で支えられていたんですね。それもコンプライアンスの問題であまり現場の権限がなくなって、全部お伺いをたてないといけなくなった時に、即興というのがやりにくくなってきたんです。そんな中でどうやって即興力を取り戻すか、ということです。
――インプロビゼーションというと、その場での演劇というイメージしかないんですが、具体的には現場にはどう取り入れられているのでしょうか。
一番分かりやすい例を挙げると、ホテルのコンシェルジュの対応みたいなのが「即興」ということです。ちょっとしたイレギュラーなことを言われたりすると、例えば宿泊客に「タオルが10枚ほしい」と言われる。そうすると、だいたい「なんでこの人10枚必要なんだ?」「おかしくないか?」とか思いながら「ちょっと確認します」と言って「あの人変なんです」と裏で言う。そういうやりとりって、なんとなくお客さんにはわかりますよね。それで、お客さんも「ここはすごく居づらい」と感じるし、お願いもしにくくなる。
即興力のある現場というのは、まずそこで「10枚ですね、分かりました」と引き受ける。何の迷いもなく。そうした上で、なぜ10枚も必要なのかを尋ねてみる。「ちなみにどのような用途でいらっしゃいますか?」そしたら、例えばですが、「どうしてもプールに行ったあとに綺麗なタオルを毎回使いたいんだ」といったような理由がわかると、「10枚を今、お持ちすることも可能ですけれども、今日、明日で5枚ずつお持ちしましょうか」と、よりお客さんにとって良いと思われる提案をすることができる。
まずは、どんなことであっても相手の言っていることをそのまま受け入れる。その上でそこをエクステンド、つまり拡大して深く洞察する。そうするとそこに次のアドバンス、展開が生まれていく。そういう即興力がないと、今後、本当にユーザーにとって便利な商品開発などもできないし、ホスピタリティも生まれないんです。
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