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コマツの下方修正をもたらしたサイエンス思考の課題

東洋経済オンラインに興味深い記事が載っていた。

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そもそもコマツは、需要予測の精密さでは業界内で一目置かれる存在だった。GPSと衛星通信を活用し、全世界のコマツ機の位置情報や稼働状況をリアルタイムで把握する独自システムを持ち、01年からは全建機に標準装備している。資源価格や資源会社の生産計画に加え、機械の稼働状況など新たな指標を構築し、需要予測の精度を高めてきた。

ただ今回、全世界的に稼働は高水準なのに、建機に対する投資が落ち続けるという、かつてない状況の前に、なすすべがなかった。

藤塚CFOは「新興国プレーヤーが増え、業績予想を立てづらくなった」と嘆く。

コマツ、「超優良企業」に吹く逆風 | 企業 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

 

記事にある通り、コマツの建設機械にはKOMTRAXという通信端末が設置されていて、世界中のコマツの機会の稼働情報がリアルタイムで把握できるようになっている。この端末によって、適切な時期に適切なメンテナンスを実施できるようになっただけでなく、稼働状況に基づく需要予測などができるようになっていた。

ところが今回、この仕組みがうまく機能しなかった。世界的に高水準に稼働しているにもかかわらず、建機への投資が回復しなかったのだ。新興国の企業は、設備投資に対して慎重で、従来の予測が当てはまらなかった。

サイエンスの世界では基本的に、過去に起こったことがそのまま、未来に踏襲されていくと考える。それでうまくいくこともあるが、今回のように状況が変わると、当てはまらなくなる。だから以前とコンテキスト(文脈)が変わっていないか、常に注意しておく必要があるのだ。サイエンスにおいてはコンテキストよりもコンテンツ(内容)そのものに注目をしているのだと言える。

アートの世界では逆に、コンテキストばかりが注目される。現代芸術などでは、コンテキストが把握できていなければまったく理解不能なものもある。同じコンテンツであっても、コンテキストが変われば評価も180度変わる。生前評価されなかった作品が、死後急に再評価されることも多い。あらゆることがコンテキスト依存なのだ。

コマツの今回の問題は、新興国というコンテキストを読み切れていなかったことに原因がある。コンテンツそのものとコンテキストを常にバランスよく捉えることが重要なのだ。