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原著者の語るビジネスモデルキャンバスの活用法

原著者のアレックスが登壇した来日記念セミナーでは、30分ほででしたが、とても興味深かった。個人的なメモとして、アレックスの話を書いておきたいと思う。

 

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ビズジェネ・カンファレンス Vol.7:ビズジェネカンファレンスVol.7 Business Model Generation 2013

 

「28ヶ国語に翻訳され、若い起業家に支持されている。ビジネスモデルのカイゼンと新しいビジネスモデルの開発に使われている。ビジネススクールでも教えられている。これから5〜10年で当たり前になっていく」

「職業には、外科医のように手術する建築家のようにプロトタイプを作る科学者のように実験するという3つがある。今日は、この3つを見ていきたい」

この3つの仕事という区分は興味深い。外科医、建築家、科学者という3つに絞っているが、IDEOは「イノベーションの達人!」 という本の中で、人類学者、実験者、花粉の運び手、ハードル選手、コラボレーター、監督、経験デザイナー、舞台装置家、介護人、語り部という10種類を上げている。普段、何かを手短に説明し、認識してもらうために使うには、やはり3つくらいがちょうどいい。

「外科医」のツールとしてのBMC

 「最初の外科医を考えてみたい。心臓施術に外科医がもっていたツールが、アーミーナイフのようなものだったとしたら、どう感じるだろうか。ビジネスではこれが普通になっている。調査によれば、SWOTなどの基本ツールを使っている人が80%だった。複雑なビジネス環境では基本ツールだけでは充分でない」

「今、1980年の巨大なケータイを使っていたらびっくりするだろう。しかしビジネスでは古いツールが使われ続けている。現在直面している問題に適切なツールが必要だ」

「外科医は道具をたくさん持っているし、13年もの経験を積んでいる。ビジネスの世界では、ツールを使うトレーニングも積んでいない。そのためつくったのが、ビジネスモデルキャンバスというツールだ」

個人的に興味深いのが、ツールを使いこなすためのトレーニングが必要だという指摘だ。これまでツールを紹介するときには、「すぐ、だれでも使える」という点ばかりが強調されるきらいがあったが、そんな魔法の道具は存在しない。デザイン思考などの美的センスが求められる領域は、やはり熟練が必要だ。

建築家のようにプロトタイプをつくる

「優れた建築はフランク・ゲーリーのような天才から生まれると思われがちだが、構造化されたプロセスから生まれる。スケッチからプロトタイプを作り、どうありうるのか自問自答する」

「プロトタイプは最初はラフなものだ。そこからどの方向へ向かうのか決めて、詳細なものにしていく」

「ビジネススクールは成長エンジンの生み出し方を教えない。新しいものを作っていくプロセスがある。デザイン思考と言われるものだ」

「いいプロトタイプのポイントは、短時間にラフなモデルを作ることだ。なぜなら、そこから学ぶことができ、また捨てることができるからだ。時間をかけるとコストがかかるし、捨てられなくなる。誤った方向にむかうリスクが高まる」 

このあとワークとして、「自転車と10万円を渡すので新しいビジネスモデルを3つ書け」というお題が出された。かなりむちゃぶりだったけど、 結構できている人が多かった。

プロトタイプにコストをかけず、そのことにより容易に捨てられるのだという指摘にはなるほどと思った。

科学者として実験する

「科学者として実験できないとリスクを最大化してしまう。ベタープレイスという会社がその一例だ。電気自動車を普及させるためにバッテリーの交換ステーションを構築した。優れたアイデアだし、優れたプランだった。問題は、科学者のように実験しなかったことだ。そのため失敗した。ベタープレイスは8億5000ドルの損失を出した」

「ビジネスプランをつくるのではなく、顧客とテストをするということ。新しいアイデアを唯一判断するのは、ボスでも投資家でもなく、顧客である」

「イノベーションには失敗が伴うし、リスクが伴う。しかしここでのポイントは、失敗するなら小さく失敗することだ。成功への道のりは、失敗率を倍にすることにある」 

これはリーンスタートアップや顧客開発モデルにも関係する指摘。新しいアイデアを試してみて、変更していくことが大切。完璧なプランを作るのではなく、ラフなプロトタイプで試してみることなのだ。

そして改めて実感したのが、ビジネスモデルキャンバスが、こうした外科医、建築家、科学者という3つの観点のいずれにおいても、非常に有効なツールであるということだった。