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新規事業は〈現在の予測〉と〈未来の予見〉のマネジメントである

今年、沖縄の健康食品産業元気復活支援事業の委員をやらせていただいている。この事業は文字通り、沖縄の健康食品業界の活性化を目的としたもので、公募で選ばれた沖縄県物産公社沖縄ウコン堂クイックデリバリーの3社が、今までにない新しいビジネスモデル構築に取り組んでいる。

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今回は第二回目の報告会ということで、進捗を確認した。6月に選定して、その後、ビジネスモデル構築セミナーの実施、3社に個別にコンサルティングを行っていた。今回、各社に半年間の進展を報告いただいた。

具体的な内容はここでは書けないのだが、やはり改めて思うのが、現実の経済的な折り合いをつけながらも(つまりモデル的に成立させながらも)、しかし同時に、未来に何を実現していきたいのかというビジョンが欠かせないということ。

というのも、「今、何をすべきか」ということは、現在の経済的な計算だけでなく、未来からの視点で考えなければならないからだ。この2つの視点では、まったく違う答えがでることさえある。

たとえば原発の問題について、確かに現在の経済的な観点からすれば、稼働再開もやむをえないかもしれない。しかし、かといって将来にわたって原発が動き続けることは容認できない。今動いている原発も時期が来たら停止し廃炉すべきだし、新規設置については反対という立場だ。これは経済的な〈予測〉ではなく、将来起こるさまざまな想定外の事象を考えたときに、〈予見〉的にもたらされる判断だ。

場の研究所の清水博先生は、こうした〈予見〉は〈危機のパトス〉から生まれるのだと指摘している。ロゴス(論理)ではなく、パトス(感情)である。小泉元首相が反原発の立場を表明しているが、(彼とアメリカとの関係など、さまざまな要素を勘案する必要はあるけれども)ある種の〈危機のパトス〉に基づくものだろう。

マネジメントというのは、こうした経済的な〈現在の予測〉(フォアキャスト)と、〈危機のパトス〉から生まれる〈未来の予見〉(バックキャスト)の矛盾に折り合いをつけることにある。

 

報告会では、ビジネスモデル上の課題を指摘しながらも、各社が描く未来を共有することに心がけた。「現実を見ろ」なんて指摘だけで新規事業が立ち上がるのなら簡単だ。「未来からの視点で今という現実を見る」というところに、新規事業コンサルティングの面白さがあると思う。