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〈場〉としての日本遺産の可能性

日本遺産プロデューサー派遣事業を通じて日本遺産に関わるようになって二年目。日本遺産の果たすべき役割が、クリアになってきた。

日本遺産というのは文化庁が行っている認定事業。2020年までに全国で100ヶ所程度が認定される予定で、2017年までに54ヶ所が決定している。認定されると3年間の補助金が提供され、それを原資にして整備・人材育成・情報発信などを行っていく。

japan-heritage.bunka.go.jp

認定された地域を訪問してさまざまなアドバイスをするのだが、初年度の地域については、協議会の組成から相談にのることになる。そのときに課題となるのが、地域の巻き込みである。自治体中心となりがちな協議会が、どのように民間活力を引き出していけるのか。多くの自治体で課題となっている。

そのヒントになるのが、場の研究所の清水博先生の〈場〉の思想である。〈場〉への与贈(見返りを求めない贈与)によって〈場〉としての地域が豊かになり、その豊かになった地域から居場所という返礼を受け取る。その円環こそが、個別の個人や企業の命だけでなく、地域全体としての〈いのち〉を育むのである。

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日本遺産は、こうした〈場〉を可視化するという役割を持っている。もともと、バラバラな点として存在していた有形・無形の文化財を線で結び、さらに面として見せていくことで活用していこうという日本遺産のコンセプトは、そのまま面=〈場〉と言い換えることができる。

ある地域では、近くにある観光地同士、企業同士がお互いに(いい意味での)ライバル関係にあり、お互いにつながっていなかった。そこが「日本遺産」という旗印のもと、ひとつの面としてつながっていく。

そこで問われているのは、「日本遺産から何か得することを引き出してやろう」という収奪の発想ではない。「日本遺産に対してどんな貢献ができるだろうか」という与贈の発想なのである。協議会は地域に対して、「日本遺産でこんな得がありますよ」とアピールするのではなく、「日本遺産を通じて地域をより豊かにしましょう。そのための協力をぜひ」と与贈を呼びかけるべきなのだと思う。

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(ここに書いたものはあくまで小山個人の私見であり、所属団体、参加プロジェクトの意見ではありません。)