LIFEHACK STREET 小山龍介ブログ

小山龍介公式ブログ

創造性を高めるための認知トレーニングについてのメモ

カンディンスキーの作品名にもなっている「Impression」「Improvisation」「Composition」という3つの創造のプロセスの、とくにImpression(印象)について、メモ的に。

印象、すなわちできごとをどのように認知するのか。印象派は、外界に見えている風景を、認知したとおりに描いた。人がどのように色彩を認知するのかという科学的な発見もあり、大胆な原色をおりまぜながら複雑な色彩を再現した。

f:id:ryu2net:20150726112333j:plain

クロード・モネ「日傘を差す女(モネ夫人)」1875 ナショナル・ギャラリー(ワシントン)

この認知の仕組みは、しかし創発的な現象である。創発的な現象とはつまり、部分の総和だけでは説明できないということだ。単に「青い光線が目に入ってきたので青を認知した」ということ以上の話である。たとえば人の顔を認識するときに起こっているのは、部分の総和以上のものを認知している。

「青い光線が目に入ってきたので青を認知した」というのは、インプットとアウトプットをつなぐ極めて原始的なシステム理解である。そのようなレベルで人間の認知は把握できない。インプットされた情報は脳の中で、さまざまにネットワークをされていく。寝ているときに見ている夢は、実際に見たものではもちろんない。それは昼間にインプットされた情報が、脳の中で絶妙に編集されながら再現されている。機械的な「青は青」という認識以上の現象が起こっている。

たとえば「本をたくさん読めばいい」なんてことがないのは、ここからも明らかで、それだけで創造性を発揮できるわけではない。重要なのはインプットの量ではなく、インプットしたものが脳の中で創発を起こしているかどうかにある。創造性開発の本質というのはその意味で、インプットメソッドではなく、アウトプットメソッドでもない。インプットもアウトプットも、創発的な認知を起こすためのプロセスでしかない。

脳の働きにリカージョンというものがある。リカージョンというのは自己言及する脳の働きである。「認知について考える自分について認知する」という入れ子構造である。このリカージョンがあるために、脳は単純な仕組みであるにもかかわらず複雑な現象を起こすのである。(『単純な脳、複雑な「私」』に詳しい。)

単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス)

単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス)

 

 認知トレーニングがあるとすれば、常に「○○と感じているところの私」を自己言及的に認知していくという方法しかないと思っている。